


コラムを更新しました:新生ミステリ研究会メンバーのおすすめノワール作品紹介!

新生ミステリ研究会メンバーのおすすめノワール作品紹介!

ミステリを読むうえで、あるいはミステリファンを自認するうえで、知らなくてもまったく問題はないけれど、知っていると時折ニヤッとできるような豆知識があります。
そこで今回は、知っているとミステリをより楽しめる(かもしれない)豆知識を書いていきたいと思います。
ある意味でゴシップ的な側面のある豆知識もあります。その点はご留意ください(本当に現代のミステリゴシップ情報を書いているつもりはないですが)。
海外ミステリの情報が多めです、ご注意ください。
〇横溝正史は乗り物恐怖症で、電車などでの長距離移動が大の苦手だった。移動の必要がある際には、妻に手を握ってもらい、気付けのウイスキーが手放せなかった
〇ミステリ評論家・ハードボイルド研究家・作家の小鷹信光の娘は作家のほしおさなえ。ほしおさなえの夫は東浩紀
〇ウィリアム・フォークナー、レイモンド・チャンドラー、ジェイムズ・エルロイに共通する、小説家であるという以外の点のひとつは、「ハリウッドで映画の脚本家の仕事をしたことがある」という点
〇北九州市小倉にある松本清張記念館には、建物内に清張の自宅が一軒まるごと再現されている(中には入れないが、執筆部屋や書庫は外から見学できる)
〇「フーダニット」、「ホワイダニット」、「ハウダニット」というミステリ用語は英語と日本語で同じものを指すが、「ワットダニット」(”Whatdunnit”)は英語で「何が被害者を殺したか」であり、例えば、毒殺された被害者に使用された毒物がわからない場合は、その毒物を特定することを指す
〇ディック・フランシスはクイーン・マザー(エリザベス王太后)のお抱え騎手であり、グランドナショナルという英国最大級の騎馬障害レースで優勝寸前だったことがある(騎乗していたデヴォン・ロック号がゴール前で寝そべってしまうというアクシデントで優勝を逃した)
〇ハードボイルド作家で直木賞受賞作家の生島治郎は、ハヤカワミステリマガジンの前進である「EQMM」(エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン)の元編集長だった
〇ブッカー賞作家ジョン・バンヴィルがミステリを書くときの名義は「ベンジャミン・ブラック」。バンヴィルはブラック名義でレイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』の公認続編も書いている(『黒い瞳のブロンド』)
〇CWA賞(英国推理作家協会賞)の最優秀長篇賞であるゴールド・ダガーは、他言語からの(英語以外からの)翻訳作品は対象外である。新人賞(ジョン・クリーシー・ダガー)など例外はあるものの、他の部門は概ね翻訳作品もノミネート対象とする。ダガー各部門にノミネートされるには、作品がCWA公認の出版社から出版されている必要がある
〇CWAは創立50周年の記念で、ダガー・オブ・ダガーというゴールド・ダガー歴代受賞作からのベスト作を選出したが、その作品はジョン・ル・カレ『寒い国から帰ってきたスパイ』だった
〇法月綸太郎の『頼子のために』は、ニコラス・ブレイク『野獣死すべし』とロス・マクドナルドの作風のオマージュであることが知られているが、桂冠詩人であったニコラス・ブレイクが本名名義で書いた詩の入門本の献辞は「鈴子のために」と訳されている
〇ヒラリー・ウォー『失踪当時の服装は』の原題は”Last Seen Wearing…”、コリン・デクスター『キドリントンから消えた娘』の原題は”Last Seen Wearing”である(ヒラリー・ウォーが先)
〇ドロシー・L・セイヤーズの「L」は「リー」(「Leigh」)であり、セイヤーズ本人は「L」を省略されることに対し非常に嫌がっていた
〇セイヤーズのピーター卿シリーズの登場人物であるバンターは、ピーター卿の「従僕」であり「執事」ではない。「従僕」は個人の付き人だが、「執事」はその家の家裁の一切を取り仕切る人物である
〇ミステリのタイトルオマージュの一例
法月綸太郎『しらみつぶしの時計』→都筑道夫『やぶにらみの時計』
白井智之『お前の彼女は二階で茹で死に』→ウィリアム・バロウズ『そしてカバたちはタンクで茹で死に』
倉知淳『猫の耳に甘い唄を』→都筑道夫『猫の舌に釘を打て』
米澤穂信「ねむけ」(『可燃物』収録)→ロス・マクドナルド『さむけ』
月村了衛『脱北航路』→ジャック・ヒギンズ『脱出航路』
〇『ジョジョの奇妙な冒険』第五部でプロシュートが発した有名なセリフ(「ブッ殺す~」云々)は、エルモア・レナード『プロント』内のセリフのオマージュ
〇宮部みゆきの杉村三郎シリーズは、マイクル・Z・リューインのアルバート・サムスン・シリーズから着想を得た
〇横溝正史『八つ墓村』の原作小説には「祟りじゃ」というセリフは一度も出てこない
〇「P・D・ジェイムズ」は「フィリス・ドロシー・ジェイムズ」、「F・W・クロフツ」は「フリーマン・ウィルス・クロフツ」、「H・R・F・キーティング」は「ヘンリー・レイモンド・フィッツウォルター・キーティング」、「E・S・ガードナー」は「アール・スタンリー・ガードナー」
〇ダシール・ハメットは書評でヴァン・ダインの作品について「辞書を片手に話す女学生のよう」と評し、逆にヴァン・ダインはハメット流のリアリズム探偵小説を非常に嫌っていた
〇作家エラリー・クイーンはハメットについて、「ミステリの新たなジャンルを作ったのではなく、ミステリの新たな叙述方法を発見した」という趣旨の言葉を述べている
〇ハメットが作家クイーンの講演会で発した質問は、「探偵クイーンの性生活はどうなっているのですか?」だった。もちろんハメットは冗談ではなく真面目に尋ねている
〇『ようこそ実力至上主義の教室へ』のアニメ第二期10話において、主人公と椎名ひよりという女の子が図書室で会話するシーンがあるが、そのシーンで一瞬映る図書室の蔵書のタイトルはすべて実在の海外ミステリ作品のタイトルパロディである
〇ハヤカワ・ポケット・ミステリは101番のミッキー・スピレイン『大いなる殺人』が初刊だが、もともと1番から100番までを江戸川乱歩に選書してもらう予定だったため、初刊が101番からはじまっている
〇英国のミステリ作家であるニコラス・ブレイクは本名をセシル・デイ=ルイスといい、桂冠詩人であった。桂冠詩人とは、英国王室の慶弔や行事の際に、王室のために詩を詠む詩人のことである。桂冠詩人には、あのアルフレッド・テニスンも名を連ねる
〇余談ではあるが、ニコラス・ブレイクの息子は二度オスカーを受賞した俳優のセシル・デイ=ルイスである
〇『グリーン家殺人事件』の原題は”The Greene Murder Case”、グレアム・グリーンの綴りも”Graham Greene”、ジョン・ディクスン・カーは”John Dickson Carr”、ヴァージニア・ウルフは”Virginia Woolf”、ネロ・ウルフは”Nero Wolfe”
〇私立探偵の俗称は、「ディック」(Dick)、「シェイマス」(Shamus)、「ガムシュー」(Gamshoe)、「オペラティヴ」(Operative)などがあり、通称は「プライヴェート・アイ」(Private-eye、PI)である。PWA(アメリカ私立探偵作家クラブ)が与える賞は「シェイマス賞」で、ハードボイルド系の賞は他に「ガムシュー賞」や「ハメット賞」などがある
〇ビリー・ワイルダー監督の『深夜の告白』の原作はジェイムズ・M・ケインの『殺人保険』である。「殺人保険」とはいわゆる「倍額保険」のことで、自然死以外の死因なら従来の保険額の倍額が支払われる仕組みのこと(A・A・フェアの作品の邦訳に『倍額保険』というものがあり、フェアはE・S・ガードナーの別名義)。『深夜の告白』の脚本はレイモンド・チャンドラーとワイルダーの共同で、チャンドラーはケインの作品を貶していたが、仕事はきちんとこなし映画は大当たりした
……いかがだったでしょうか? 豆知識を楽しんでいただけたのなら幸いです。