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年末はなにを読みますか?

 こんにちは。会長の庵字です。
 今回のコラムは、去る11月23日に開催された「文学フリマ東京41」に出店したときの模様や、文学フリマそのものについても、個人的な見解を交えて書いていきたいと思います。

 

あなたは年末に読む本を決めていますか?
決めているとしたら、どんな本を読むのでしょうか?
あるいは、本を読まずに自宅でゆっくりと休暇を楽しむでしょうか?
また、年末年始も仕事だよ、という方もいらっしゃるでしょう。

私事で恐縮ですが、僕は毎年の年末に、通俗ハードボイルドを読むことにしています。
通俗ハードボイルドは、軽快で、世事を忘れさせてくれて、どこかのんびりとして明るくて、とぼけていながらもソリッドで、とても魅力的なジャンルだなぁと感じます。

通俗ハードボイルドの雄といえばもちろんカーター・ブラウンですが、毎年カーター・ブラウンの作品を読むのも何だか味気ない。だから、自宅に揃える通俗ハードボイルドのストックやバリエーションは切らさないように、豊富に取りそろえることにしています。

昨年はフランク・グルーバーの『走れ、盗人』を読みましたし、一昨年はブレット・ハリデイのマイク・シェーン・シリーズからなにかを読んだ気がします。
この「なにか」というのがとても大事であり、読み終えて、「ああ、面白かった」と本を閉じたあとに作品の詳しい内容も頭から抜け、一週間も経てばなにを読んだか忘れてしまう。ただ、「面白かった」という印象だけは頭の片隅に残っている。そういった刹那的な読書が年末にできると、「いい読書体験だったなぁ」と感じます。

遅ればせながら通俗ハードボイルドに関する説明が必要かと思いますが、通俗ハードボイルドは「軽ハードボイルド」とも呼ばれ、ハメットやチャンドラーのような「正統派」のシリアスなハードボイルドから見ると、ずいぶんとユーモラスで、軽妙洒脱で、ときに下品で、それでいて一人称私立探偵小説の体裁は保っています。非常に俗っぽい大衆路線のハードボイルド、と理解していただければいいかもしれません。

煩悩を追いやる年末に、あえて煩悩だらけの俗なハードボイルドを読む。なんだかわくわくしてきますね。年末に読む通俗ハードボイルドは格別です。
難点は、通俗ハードボイルド作品を入手するのが若干難しいことと、手に入れても本の状態がそんななによくないものが多いことでしょうか。
通俗ハードボイルドに分類される作品はほぼ重版未定ですし、数十年前に出版されたものを読むわけですから、本は焼けて紙魚だらけ、なんてことも。
でもいいんです。それも醍醐味ですから。

それに、通俗ハードボイルド作品はどれも薄くてすぐに読み終えられるのも魅力です。
大抵の場合、ハヤカワ・ポケット・ミステリで150ページ程度、多くても200ページ程度です(文庫換算200ページ前後)。翻訳も軽いものが多く、本当にすぐ読めます。二時間もあれば余裕です。
忙しい年末の合間に、大掃除をすませ、年越しそばを食べ、通俗ハードボイルドにひたる。
僕のようなミステリファンにとってはとても幸せな時間です。

最後になりましたが、今年は新生ミステリ研究会のイベントにたくさんコミットさせていただきました。そのなかで、とても楽しい時間を過ごすことができました。会員のみなさまには感謝しています。
これからも、色々な活動にコミットさせていただきたいと思います。
会員のみなさま、来年もよろしくお願いいたします。
また、このコラムを読んでくださっている読者の方々にもお礼申し上げます。
来年もよろしくお願いいたします。

それでは読者のみなさまも会員のみなさまも、よいお年を。
みなさまにとって来年が良き一年になりますように願っております。

樹 智花でした。

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