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  • 雪の足跡密室が理解できない人もいる(私だ)

     

     こんにちは!
     鈴木女子と申します。半月ほど前に新生ミステリ研究会に加入した新参でございますが、さっそくコラムを任せていただきましたのでかるーく筆を執っていきます。

     新生ミステリ研究会は、全国各地の文学フリマを巡っています。
     どの地方にも、そこにしかないもの・ことや、逆にそこにだけないもの・ことが存在すると思います。
     そこで今回は、各地方の常識の差異がミステリの理解に及ぼす影響を書いていこうと思います。

     と言うわけで、一例として私の話を。

     私は生まれも育ちも沖縄です。
     実は沖縄には電車が存在しません。モノレールはありますが、那覇市と隣町の浦添市を結ぶのみであまり遠くへは行くことはできませんし、一本道で、乗り換えも存在しません。
     ここ二年ほどで少しずつ東京や大阪などの他県へ足を伸ばすようになったものの、それまでの私は電車はおろか、駅・ホームなどの概念もいまいちピンと来ないほど電車関連の事柄に疎く、だから——と言うのも短絡かもしれませんが、時刻表トリックなんかを扱うトラベルミステリに一切食指が動きませんでした。
     地理に弱く、また、列車内の様相を上手く想像できないので、旅情など露ほども分からないし、何時にどの電車に乗ってこう乗り換えればアリバイが崩せる! という説明も難しく感じてしまいます。

     それから、沖縄では雪は降りません。
     私は人工雪以外に人生でいちども雪を見たことがなく、従って雪の足跡による密室がイメージできません。
     例えば、「小屋に他殺と思しき変死体があるのに、足跡が行きの一筋分しかない!」とか言われても、「雪を均す道具を後ろ手に持って帰ればいいんじゃないの?」と思ってしまいます。それができない事情があったり、その手段で痕跡を完全に抹消することは原理的に不可能で、普通ならそれを経験的に知っているのかもしれませんが、なんというか、そのへんのことを考えようとすると頭に霞がかかったみたいに漠然としたイメージしか浮かばなくなるのです。

     このように、こちらが把握していない常識を前提に謎をつくられると、「よく分からんけど頑張っていろいろ乗り換えればこの時間に間に合うんじゃないの?」「よく分からんけど頑張れば足跡を残さず小屋を脱出できるんじゃないの?」と雑に結論を出して、そこで思考が止まってしまいます。

     そのシチュエーションのなかで何ができて何ができないのかがよく分からないから、作中でいま何を問題にしているのか、あるいは何が不思議なのかがいまいち理解できないし、解決しても「ああそうなんだ」としか思えない……。

     思えばミステリ(特に意外性重視の作品)には、我々が内面化している常識を逆手に取って読者を驚かせるという一側面があります。
     ファンタジーは我々の知る世界とはまったく常識の異なる世界を描きますが、常識を逆手に取るみたいな展開が必要ないため、単純に説明や描写を積み重ねることで作品中の世界観を共有できます。
     現代日本を舞台としたミステリで作品中の常識を共有しようとしても、それは大多数の人にとって「共有されるまでもないこと」であり、不要な説明でしかありません。あるいは私のような少数派に配慮して一部の常識を説明的に描く考えもあるかも知れませんが、その場合「あ、このことを逆手に取って何かを仕掛けるつもりなんだな」と丸分かりになってしまいます。

     伏線は「さらっと」張らなくてはならないのです。

     ちなみに、この問題は読み手としてミステリに触れているとき以上に、書き手としてミステリを扱っているときのほうが深刻です。
     ある時期から、私の作品では作中で明言されていない限りは基本沖縄か架空の現代日本が舞台となるようにしています。
     知らず、沖縄でしか通じない常識を作中に持ち込んでいたとしたら……私が時刻表トリックや雪密室に頭を悩ませているように、読者の皆さまも頭を抱えているのかもしれません。

     きっと沖縄における「電車」や「雪」のようなものが、各都道府県にも存在すると思います。
     それぞれの地方が持つ特定のサブジャンルへの弱みや強みを発見してみるのも、また一興かもしれませんね。
     
     皆さんはどのミステリに苦手意識がありますか?(なんてネガティブな問いかけなんだ……)


文学フリマの近況雑感

  • 文学フリマ大阪14_雑感

    庵字

     三回目の大阪出店でした。会場をインテックス大阪に移してからは二回目の開催ですが、
     会場が広く、ブースがかなり奥まった位置にあることも影響したのか、人の流れにいつも以上に波があるように感じました。
    「叙述アンソロ」は11冊しかなかったのですが、14時台で完売しました。数があればもっと売れていたと思います。また「メビウス館」も11冊売れており、相変わらずの強さを発揮しています。ブースに足を止められたかたに例によってリサーチすると「館ミステリが好き」というかたが何名かいらっしゃり、おすすめするとかなりの高確率で購入いただけました。2024年5月の東京で頒布開始してから二年以上経過しているのに、出せば売れないときはない、という定番アイテムになりました。頼もしい限りです。初登場の「ミスフリ6」の頒布数は10冊でした。これまでのミスフリ新刊の初回頒布数としては一番少なかったと思います(「Vol.5」のみ初回頒布数の記録なし)。「初心者向け」と銘打ったことで、良くも悪くも客層を選んでしまったところはあると感じますが、その分、地道に売り続けられるコンテンツであろうと思います。ミスフリ全体でも各巻一冊は出ていて、「Vol.1」がまだ4冊売れているというのはよいことです。
     凛野さん、尾ノ池さん、安条さんが個人ブースを出されて人手が少なくなるため、無料配布は150部と少なめに見積もって持参しました。結果、16時を待たずに配布は終了。15時くらいから、残りの部数とそれまでの配布状況を鑑みて、「積極的に手渡ししなくても、余裕のあるときだけ声をかけても配布完了できるな」と思い、ゆっくりできました。入場者数に対して用意部数が少ないので配布率は2.0%と小さくなりましたが、じゅうぶんな部数を用意したとしても、体感ではあと50部配れたかどうか、というところでした。その場合でも配布率は3%に届かないので、大都市圏での無配受け取り率は厳しくなっていることは変わらないようです。また、今回初めて(14時台半ばくらいからですが)「ご自由にお持ち帰りください」の札を立てて配布紙を置く方法をとってみたところ、何名か手に取るかたがいらっしゃいました。卓上に余裕のある会場では今後もやっていきたいと思います。
     前回の大阪開催は万博と重なっていたため、「昨年の入場者数は『万博のついで』というブーストのかかった数字で、今年はそれほどでもないだろう」と高をくくっていたのですが、蓋を開いてみれば全然そんなことはなかったぜ。昨年、7,611人の入場者数のあった京都が来年から入場料を取るようになるので、大阪も時間の問題のような気がします。







    無料配布

    『一生に一度のライブ』庵字


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(雑感は、京都10_20260118以降)