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  • 春に読みたい本10選

    ご無沙汰しております。
    樹です。
    もうすぐ新年度ですね。

    そこで、春に読んでおくといいんじゃないかなぁと思う本を10作ほど紹介します。
    なるべく幅広い範囲のカテゴリやジャンルから選んだつもりです。
    僕が既読のものから選びましたので、広いつもりでも人によっては幅が狭く感じられるかもしれませんが……苦笑

    1:ジョン・ファンテ『バンディーニ家よ、春を待て』

    ジョン・ファンテといえば、あの有名な無頼派作家であるチャールズ・ブコウスキーが深く尊敬していた、隠れた名作家です。
    本作はアルトゥーロ・バンディーニを主人公としたバンディーニ・カルテットの第一作ですが、本作はアルトゥーロ・バンディーニが主人公ではなく、その父親に焦点が当たります。
    貧しく様々な家庭内の問題を抱えるバンディーニ家のあれこれが、静かなユーモアを保ちながらペーソスも加えつつ語られます。
    ここでの「春」はダブルミーニングですが、果たしてバンディーニ家に「春」は来るのでしょうか? それは読んでからのお楽しみということで。

    2:久美沙織『丘の家のミッキー』

    コバルト文庫における、名作中の名作です。
    主人公の未来(みく)は中学三年生、都内の中高一貫校の生徒でしたが、家族で神奈川の海沿いへ引っ越すこととなり、その引っ越し先は高校の校則上では通学圏から外れてしまうため転校を余儀なくされます。
    不本意な転校に大きな不満を抱きながらも、転校した先で未来は正反対の性格を持つ親友に出会い、また地域の人々や留学生など様々な人物たちとの交流を通して未来の人生の視野が開けていきます。
    さわやかな青春小説の傑作です。

    3:宮島未奈『成瀬は都を駆け抜ける』

    みなさんご存じ成瀬シリーズの第三巻、最終巻です。
    京都大学理学部の一年生となった成瀬あかりは、前半ではその人物性で関わった人々を良い方向に変えていき、また後半ではそれまでのシリーズで登場した人物たちとの新たなエピソードが語られていきます。
    それぞれの短篇が小説として高い水準で物語られ、また成瀬の魅力的なキャラクター性の高さもずば抜けています。
    特に一篇目は新年度を迎えた学生さんに読んでもらいたいですね。

    4:ジャック・フィニイ『ゲイルズバーグの春を愛す』

    各話が独立した短篇集です。
    全篇に漂うノスタルジックで柔らかな雰囲気と、優しさや皮肉が効いた切れ味の鋭い短篇がそろっています。
    とくに表題作と、伴名練『百年文通』の元ネタのひとつになっているであろう「愛の手紙」が白眉だと思います。

    5:生島治郎『浪漫疾風録』

    草創期の早川書房に入社した越路(生島のこと)が、現在ではビッグネームとなった作家や先輩編集者たちとの交流の楽しさや愚痴、そして雑誌・小説の編集の大変さを小説風に描いた回顧録的フィクションです。この本は社会人一年目に目を通してみるといいことがあるかもしれませんね。かなり古い本ですが、役に立つかもしれませんね。

    6:アンドリュー・ショーン・グリア『レス』

    本作には、「恋愛」と「結婚」という「人生の春」あるいは「青春」(的なもの)についての明るい展望が描かれています。
    内容自体は小説家小説ともいうべき作品なのですが、前述したことを理解していただくには本作を読んでもらうことが一番手っ取り早いです。

    7:現代思想2019年3月号 特集「引退・卒業・定年」

    特集そのままの内容の雑誌です。
    雑誌「現代思想」は内容が固いものの、この特集は今後の人生全体で役に立つかもしれない知見が多いように思います。記事の数も豊富ですから、気になったものを選んで読んでみるといいかもしれませんね。

    8:森茉莉『紅茶と薔薇の日々』

    文豪森鴎外の愛娘、茉莉のエッセイ集です。森茉莉的には随筆集といったほうがいいでしょうか。
    僕は、森茉莉と聞くとなんだか春をイメージします。ただそれだけの個人的なことでこちらにあげたのですが、森茉莉の鋭く独特な感受性は読むものを驚かせ、ときにははっとさせます。ほんとに感性が豊かな人だったんだなぁ、と。

    9:天野こずえ『ARIA』

    こちらは漫画で、テラフォーミングされた火星での通年の出来事が描かれています。
    新年度に読むには明るく朗らかでよい作品だと思います。
    舞台はネオ・ヴェネツィア、イタリアのヴェネツィアを模したこの街で、主人公の水無灯里(みずなしあかり)は一人前のゴンドラ乗り、ウンディーネを目指して友人たちと三人一緒に毎日練習の日々です。……と書くと、「お仕事もの」のように感じられるかもしれませんが、基本は日常ものです。

    10:ジョン・ファンテ『満ちみてる生』

    ラストは再びジョン・ファンテの作品で締めます。
    妻が妊娠し、それを機に夫である主人公の父が田舎から都会の主人公宅をリフォームするためにやってくる様子や、妻が妊娠を機に様々な面で変化していく様子をときにコミカルに、ときに哀愁を漂わせて描いています。作品全体に漂うユーモラスさは読んでいてにこにこできます。ファンテ自身が感じていたかもしれない「父になるということへの不安」や「自身の父の前では永遠に息子である」といった心情、また「新たな家族ができることに対する喜び」など、不安と期待で入り乱れた新年度には持ってこいの作品でしょう。

    ここまで、あえてミステリ作品はなるべく避けて選んでみました。
    新年度に読む本のジャンルを新しく開拓してみるのもいいかもしれませんね。

    樹でした。


文学フリマの近況雑感

  • 文学フリマ広島8_雑感

    庵字

    開催:2026年2月8日
    入場者数:1,297人(出店者:464人・一般来場者:833人)
    無料配布:用意90部 配布部数90部 配布率6.9%(配布数÷入場者数×100)

     新生ミステリ研究会の広島初出店でした。これまで出店してきた文学フリマにおいては、幸いなことに天候に恵まれ続けていましたが、今回の広島は雪。しかも、イベント開催の8日朝から夕方にかけてのみと、狙ったかのような降雪に見舞われました。まさか2月の広島で雪とは想像だにしていませんでした。
     イベントも明らかに天候の影響を受けました。文学フリマの盛況ぶりは右肩上がりで、新生ミステリ研究会が過去に出店した開催の来場者数は、軒並み前年度を上回り続けていましたが、ここへきて初めて前年度来場者数を下回りました(前回の「文学フリマ広島7」の来場者数は1,328人。31人の微減)。会場を見回しても、いつも以上に空のブースが目立ちました。出店者側にも降雪のためにやむなく参加を見送った方が多くいらしたのでしょう。
     売上としては、雪の影響を考慮しても、個人的な期待を若干下回ってしまったかなと思います。特に、初めての土地での頒布にもかかわらず『叙述アンソロ』が二桁に届かなかったのは残念でした。「広島8」での「小説|ミステリ」ジャンルの出店者は4サークルと、地方開催にしては多いほうで、広島のミステリ熱は高いほうなのだなと思っていたのですが。
     会場がL字型で、太い線のほう(メインストリート)と出入口が直結していて、事務局本部もそちら側にあったため、ミステリジャンルが配置された細い線のほうは目的意識がないと足が向かない構造で、来場者の流れがあまり届かなかったのかなとも感じました。
     今回の無料配布は90部を用意し、無事に配りきることが出来ました。最後の配布がイベント終了数十分前でしたので、ほどほどな部数で、配布率も6.9%と悪くありませんでした。とはいえ、上に書いたようにブース自体がメインから外れた場所で、加えて雪による来場者の足の鈍りもあったことから、条件が良ければ150~200部くらい配布できるポテンシャルはあるのではと感じました。今回は参加者が二名(庵字、尾ノ池)だったため、各人が1ページ分の短編を書き、それを一枚の紙の裏表に印刷することで紙のまとめ作業が低減されたこともスムーズな配布に繋がりました。こういう物理的な手間減らしはもっと色々とアイデアを出していきたいですね。
     今回、一番の課題となったのは、「1ブースのみのスペース時の本の陳列方法」です。個人での出店を除き「新生ミステリ研究会」での出店時に1ブースだけで展開したのは、2024年の「文学フリマ岩手9」と「文学フリマ札幌9」の二回のみです。当時は本の種類も少なかったため、陳列に苦労はありませんでしたが、現在は事情が異なります。現状、2ブース時でもすべての本を表紙を向けて陳列するのは困難です。今回は多くの本を背表紙を向ける立てた格好で出しておかなければならなくなり、公式Webカタログや、会アカウント、メンバーのXでの告知、ホームページなどで事前に知っていただき、本の指名買いをされるのでもなければ、本を会場で目に留めてもらう機会が激減してしまいました。今回、売上が事前の期待に届かなかったことには、この影響もあるように感じました。ブースにお越しいただき、興味を持ってくださった方には、その場で紙カタログを提示して全作品を確認していただけるようにはしていますが、やはり、通路を歩いていて表紙に目が留まる、という偶然の出会いが貴重であることは間違いありません。すべては無理であるとしても、せめて半数以上の本を表紙を向けてディスプレイする方法、設備が出来ないか、考えていきたいです。






    尾ノ池花菜

     今回は新生ミステリ研究会、初の広島出店!尾ノ池も初のローカルエリアでの販売でした。まずは広島での素敵な出会いに感謝申し上げます。
     当日は広島でも何十年ぶりと言われる雪が降り、大変情緒深いスタートとなりました。
     広島はミステリブースは4つ!うち我々ともうひとつは全国をまわっているブースさんのようでした。参加者さんも出店者側も、天候による交通機関の乱れを心配して早退されるブースさんも多かったです。実際に広島のバスダイヤは乱れ、電車は止まり、高速は通行規制がかかっていたようです。路面電車だけが徐行運転していました。ありがたや。
     広島ではほとんどご新規さん、はじめましての方が多かったです。アンソロジーの売上げがやはり良かった印象。ミステリは普段読みません、という方もお手に取っていただき、感謝ばかりでございました。作者さんのファンや、一緒に創作活動をしている仲間ともご挨拶がかない、広島でしか出会えないみなさんに会えて感動しました。
     人が少ない間は、お隣のブースの方と楽しくおしゃべりをしました。大変気さくな方で、お話もとても面白く勉強になりました。忙しい販売時間にはない、創作者同士の交流にこんなに濃密な時間を割けたことは大変貴重かと思います。
     あと、広島飯、マジで美味しい。お好み焼きもそうだけど、尾道ラーメンも美味しい。広島焼きは食べている途中はお腹いっぱいで苦しいですが、食べ終わった後、次の日には食べたくなります。シャBUだよ。あれは、シャBU。
     次は文学フリマ東京だ~~~。







    無料配布

    『中央と地方の文化的格差』庵字

    『幻馬のいななき』尾ノ池花菜


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歴代文学フリマ_無料配布&雑感
(雑感は、京都10_20260118以降)