SNSで、ミステリファンの一部の間では個人的に好きな作品を100冊発表する、ということが最近流行っていたようです。筆者にも自己顕示欲というものがあるようで、ここで個人的なミステリ作品100選を選んでみたいと思います。
作品の選出は今現在の気分でおこない、作品をあげた順番は筆者の愛好度と関係ありません(順不同です)。選出にしばりを設けることにして、一作家一作品、国内作品50作、海外作品50作をそれぞれ選び、また短篇は短篇集として単行本になっていれば、その短篇集をまるごとあげます。選出において、ミステリの大きなサブジャンルごとに10冊ずつ選びます。そのサブジャンルとは、「本格ミステリ」「犯罪小説」「警察小説」「冒険小説」「その他」の5つです。そして、新生ミステリ研究会の冊子『Myster Freaks vol.4』で筆者が「好きなミステリ5選」に取りあげた作品は除きます。また、作品へのコメントを一言だけ付け加えます。
〈国内篇〉
本格ミステリ
1:『悪魔が来りて笛を吹く』横溝正史
・横溝による犯罪悲劇の白眉だと思っています
2:『黒猫館の殺人』綾辻行人
・館シリーズでは本作を偏愛しています
3:『首無の如き祟るもの』三津田信三
・初読のとき、真相で唖然としました
4:『黒死館殺人事件』小栗虫太郎
・好事家と思われるかもしれませんが、大好きなんです……
5:『彼女が探偵でなければ』逸木裕
・現代の国内私立探偵小説の到達点だと思います
6:『頼子のために』法月綸太郎
・タイトルがとても効いています
7:『匣の中の失楽』竹本健治
・幻惑され、魅惑されました
8:『夜よ鼠たちのために』連城三紀彦
・騙しの技巧、ここに極まる、といった感じです
9:『妖女のねむり』泡坂妻夫
・幻想的でありながら、本格ミステリとしての魅力がギュッと詰まっています
10:『人それを情死と呼ぶ』鮎川哲也
・真相に驚き、ラストの展開に感動しました
犯罪小説
1:『冷えきった街』仁木悦子
・ハードボイルドな仁木悦子。主人公の三影潤が魅力的です
2:『アヒルと鴨のコインロッカー』伊坂幸太郎
・伊坂さんの作風は唯一無二だなぁ、と思います
3:『暗い落日』結城昌治
・ロスマク調の家族の悲劇を、日本を舞台に書ききった見事さ
4:『我が隣人の犯罪』宮部みゆき
・バラエティに富み、かつすべての収録作が高水準な短篇集
5:『蘇える金狼』大藪春彦
・大藪の暴力小説はクセになります
6:『さらば長き眠り』原尞
・文体も会話劇もかっこいい
7:『藻屑蟹』赤松利市
・初読時、すごすぎて唖然としました
8:『静かな炎天』若竹七海
・葉村晶の魅力と、ビブリオ・ミステリとしての魅力と
9:『黒い画集』松本清張
・松本清張ここにあり、といった短篇集
10:『セーラー服と機関銃』赤川次郎
・あまりの面白さに愕然としました
警察小説
1:『可燃物』米澤穂信
・ソリッドで切れ味が鋭い、捜査小説と本格ミステリのお手本
2:『第三の時効』横山秀夫
・米澤さんの言うとおり、横山以前・以後にわかれますよねぇ
3:『機龍警察』月村了衛
・物語が動的で躍動感があります
4:『新宿警察』藤原審爾
・昭和の作品ながら、普遍的な魅力を持ちます
5:『退職刑事』都筑道夫
・ちょっとずるいかもしれませんが、好きなんです
6:『新宿鮫Ⅻ 黒石』大沢在昌
・現代警察ハードボイルドの傑作です
7:『あなたが殺したのは誰』まさきとしか
・友人にすすめられてハマりました
8:『明治断頭台』山田風太郎
・これもずるいかもしれませんが……ある作品と比べながら読むといいかもですね
9:『終着駅殺人事件』西村京太郎
・この作品で西村京太郎の面白さに目覚めました
10:『半七捕物帳』岡本綺堂
・半七親分かっこいいですよね
冒険小説
1:『黄土の奔流』生島治郎
・これぞ活劇小説! といった魅力満載
2:『猛き箱舟』船戸与一
・前半と後半のあまりの違いに驚きました
3:『カディスの赤い星』逢坂剛
・逢坂さんを知るきっかけとなった作品です
4:『君よ憤怒の河を渉れ』西村寿行
・寿行、なんだかんだ好きなんですよね
5:『飢えて狼』志水辰夫
・冒頭から魅了されます
6:『高丘親王航海記』澁澤龍彦
・ 正しい意味で冒険しているかもしれないですね、活劇ではないですが
7:『殉教者』馳星周
・ノワールっぽいですが、冒険小説の風味がある気がします
8:『わが手に拳銃を』髙村薫
・『李欧』も好きですが、あえてこちらを
9:『孤島の鬼』江戸川乱歩
・ここで乱歩先生を
10:『死霊鉱山』草野唯雄
・本格ミステリですが、風味がそれっぽい
その他
1:『夜明けの睡魔』瀬戸川猛資(評論)
・準古典ミステリ評論の金字塔です
2:『流れ舟は帰らず』笹沢佐保
・木枯し紋次郎、好きなんですよね
3:『俺が公園でペリカンにした話』平山夢明
・独特の言語センス爆発。唯一無二
4:『X橋付近』高城高
・日本ハードボイルドの夜明けですね
5:『異郷の帆』多岐川恭
・こういう時代ものも好きです
6:『密室殺人ありがとう』田中小実昌
・変な話が多い短篇ミステリ集ですが、コミさん本当に大好きで
7:『シャーロック+アカデミー logic.1』紙城境介
・段々クセになる面白さがあります
8:『八月は残酷な月』河野典生
・イメージとは一味違うハードボイルド
9:『ダック・コール』稲見一良
・幻想的で硬質な文体に惹かれます
10:『枯草の根』陳舜臣
・陳舜臣の本格ミステリって独特ですよね
〈海外篇〉
本格ミステリ
1:『ジェゼベルの死』クリスチアナ・ブランド
・いかにもブランドらしい本格ミステリですね
2:『クリスマスに少女は還る』キャロル・オコンネル
・何も言えません……思わず泣きそうになりました
3:『哀惜』アン・クリーヴス
・「性格小説」かつ本格ミステリという珍しい作品です
4:『蛇の形』ミネット・ウォルターズ
・「正義をなす」とは何かについて、思いを巡らしました
5:『見えないグリーン』ジョン・スラデック
・読後、思わず笑ってしまいました
6:『ホッグ連続殺人』ウィリアム・デアンドリア
・これも何も言えない……
7:『ハマースミスのうじ虫』ウィリアム・モール
・「英国男子の心意気」といった感じです
8:『スターヴェルの悲劇』F・W・クロフツ
・地味でも面白いものは面白い
9:『悪党どものお楽しみ』パーシヴァル・ワイルド
・楽しく気軽に読めるギャンブルミステリですね
10:『切断 ドーヴァー4』ジョイス・ポーター
・これは忘れられない……
犯罪小説
1:『赤い収穫』ダシール・ハメット
・ハメットの天才は、デビュー長篇からもわかります
2:『五人対賭博場』ジャック・フィニイ
・青春ケイパー小説。何者かになりたい青年たちの犯罪劇
3:『悪党パーカー/襲撃』リチャード・スターク
・ケイパーのお手本であり、ノワールのお手本
4:『冬そして夜』S・J・ローザン
・ゼロ年代私立探偵小説の代表作と呼べるでしょう
5:『ある晴れた朝 突然に』ジェイムズ・ハドリー・チェイス
・初めて読んだチェイス。衝撃を受けました
6:『石を放つとき』ローレンス・ブロック
・中短篇集。「バッグ・レディの死」は筆者のATB一位です
7:『凶手』アンドリュー・ヴァクス
・簡潔で乾いた文体がたまらない。物語としても素晴らしいです
8:『鮫とジュース』ロバート・キャンベル
・軽妙洒脱なクライムノベル。肩の力を抜きつつ
9:『ゼルダ』カーター・ブラウン
・軽ハードボイルド(通俗ハードボイルド)の奇跡のような作品ですね
10:『リアルでクールな殺し屋』チェスター・ハイムズ
・こんな警察ハードボイルド読んだことがなかったです
警察小説
1:『生まれながらの犠牲者』ヒラリー・ウォー
・ラストで心が苦しくなります
2:『キングの身代金』エド・マクベイン
・思考実験的誘拐ミステリとして読めます
3:『唾棄すべき男』マイ・シューヴァル/ペール・ヴァールー
・悪いやつっているもんですね……
4:『五番目の女』ヘニング・マンケル
・この風味はマンケルにしか出せない……
5:『わが心臓の痛み』マイクル・コナリー
・色んな意味でびっくりしました
6:『夢果つる街』トレヴェニアン
・いぶし銀の警察小説だけど、どこか変な物語でもあります
7:『警察署長』スチュアート・ウッズ
・サーガ的警察小説。こういうのを読んだのは初めてでした
8:『三日間の隔絶』アンデシュ・ルースルンド
・こんな真相の警察犯罪小説読んだことがなかったです
9:『メグレと若い女の死』ジョルジュ・シムノン
・シムノンの人情劇は心に沁みます
10:『寒波 P分署捜査班』マウリツィオ・デ・ジョバンニ
・イタリア版87分署。登場人物がみな個性的で良いですね
冒険小説
1:『女王陛下のユリシーズ号』アリステア・マクリーン
・このまま名前が忘れ去られるには惜しすぎる……
2:『摩天楼の身代金』リチャード・ジェサップ
・発想も展開も素晴らしいの一言
3:『度胸』ディック・フランシス
・初期作も素晴らしいですよ、フランシス
4:『航空救難隊』ジョン・ボール
・航空冒険小説の白眉
5:『ファイアフォックス』クレイグ・トーマス
・これに続編があるんですか……?
6:『燃える男』A・J・クィネル
・冒険小説はこうありたいものですね
7:『眠る狼』グレン・エリック・ハミルトン
・近年の冒険小説も面白いんですよね
8:『秘密資産』マイクル・シアーズ
・友人にすすめられてですが、大変良かったです
9:『約束の道』ワイリー・キャッシュ
・ダメ男ミステリ、好きです……!
10:『両京十五日』馬伯傭
・さすがこのミス一位の抜群の面白さ
その他
1:『誰でもない男の裁判』A・H・Z・カー
・短篇集ですが、表題作のすさまじさといったら
2:『ウサギ料理は殺しの味』ピエール・シニアック
・発想の勝利だし、分類不可なミステリ
3:『瞳の奥に』サラ・ピンバラ
・ここまで変なミステリは読んだことがなかったです……
4:『殺人四重奏』ミシェル・ルブラン
・もうひとりのルブラン。発想が楽しいですね
5:『六死人』S・A・ステーマン
・ダイイングメッセージと読者への挑戦……受けて立ちたい方はどうぞ
6:『さらばその歩むところに心せよ』エド・レイシイ
・父親と息子、関係性は複雑です
7:『とっておきの特別料理』小鷹信光 編
・小粋でお洒落な短篇ミステリアンソロジー
8:『ずっとお城で暮らしてる』シャーリイ・ジャクスン
・ハマる人には突き刺さる話でしょう
9:『見知らぬ乗客』パトリシア・ハイスミス
・心理描写の濃厚さといったら
10:『深夜緊急版』ウィリアム・P・マッギヴァーン
・マッギヴァーンも忘れ去られてほしくない……