


【ネタバレ注意】『アクロイド殺し』読書会資料★公開★

【コラムでも】庵字会長に聞く!バカミスの世界 ※ネタバレ注意※

こんにちは。尾ノ池花菜です。
9月18日に行いました新生ミステリ読書会では、エラリー・クイーン『ギリシャ棺の謎』を取り上げました。
この読書会の様子はこちらからご覧いただけます。本書のミステリの構造上の興味深い点に切り込んで、分析しています。参加メンバーのおかげで、大変面白い会になりました。
さて、エラリー・クイーンの国名シリーズは以下の著作があります。
1929年 ローマ帽子の謎 The Roman Hat Mystery
1930年 フランス白粉の謎 The French Powder Mystery
1931年 オランダ靴の謎 The Dutch Shoe Mystery
1932年 ギリシア棺の謎 The Greek Coffin Mystery
1932年 エジプト十字架の謎 The Egyptian Cross Mystery
1933年 アメリカ銃の謎 The American Gun Mystery
1933年 シャム双子の謎(シャム双生児の秘密)The Siamese Twin Mystery
1934年 チャイナ橙の謎 The Chinese Orange Mystery
1935年 スペイン岬の謎 The Spanish Cape Mystery
1936年 中途の家(途中の家)Halfway House
1937年 ニッポン樫鳥の謎(日本庭園の秘密) The Door Between
ここで、もしエラリー・クイーンが生きていたら、ぜひ書いてほしかった、令和の国名シリーズを勝手に妄想してみたいと思います。
●宇宙:国際ステーション
エラリークイーンの時代になく、現代にあるもの。それは、人間の宇宙進出です。これほど簡単に人間が宇宙に行ける時代は、進化の現れではないでしょうか(めちゃくちゃお金がかかりますが)。
ぜひ、エラリー・クイーンが生きていて、現代風のミステリを書いてくれるならば、「宇宙密室殺人事件」を書いてほしいです。地球を周回する国際宇宙ステーションで、アメリカの天文学者が殺された!船外活動用スーツを着たまま、国際ステーション内の密室で殺害されていた。内側からも、外側(宇宙空間)からも、侵入は不可能。
犯行時、ステーションには各国から派遣された6人の宇宙飛行士しかいなかった。互いにアリバイを主張する中、NASAから臨時派遣されたエラリー・クイーン探偵が地球からの通信を通じて捜査に協力することに――。
宇宙空間、という閉じられた大舞台で、船外活動用スーツや空気の流れなど宇宙ならではのてがかりから推理してほしいですね。無重力空間での被害者の血液の散り方はかなりドラマチックかと思います。宇宙に隠された第二の密室とかあれば、かなりテンションがあがりますね。
タイトル、以下はどうでしょう。
『宇宙密室の謎』(原題:The Spacesuit Death Mystery)
●南極
宇宙があるなら、ぜひ南極という極地でもエラリー・クイーンの作品が見てみたいものですね。南極には、「氷と雪に閉ざされた孤立した舞台」「極限環境」「科学基地」という、わくわくするような要素が詰まっています。
南極にも国際研究基地があるのでしょうか。暴風雪のため外界との連絡も遮断され、研究員複数名が数週間にわたり完全に孤立できる環境が整いそうです。そこで、研究所で殺人が。雪の上には足跡がなく、雪密室のトリックも可能です。血痕の凍結速度や白夜・極夜によるアリバイ工作、足跡はどのように消されたのか、など謎が魅力的です。
タイトルは以下なんてどうでしょう。
『南極の白い謎』(原題:The Antarctic Snow Mystery )
●ウクライナ
ウクライナーロシア戦争はいつ終結するのでしょう。エラリー・クイーンが政治的な活動を前面的に行うかどうかは未知数ですが、せっかくなので問題提起の意味も込めて、ウクライナを舞台にエラリー・クイーン風のミステリを考えてみました。
ウクライナの古都、修道院から「聖母の肖像画」が忽然と姿を消した。その後、ニューヨークでロシア正教を研究していた研究者が謎の死を遂げる。彼の首元には奇妙な十字形の切り込みが。ロシア正教、またソ連時代の確執が交差し、歴史と信仰、祖国への忠誠心が絡まる二重の謎はどうでしょうか。
タイトルはこう。
『ウクライナ聖母の謎』(原題:The Ukraine Maria Mystery )
●韓国
韓国文化、特にK-popなどの文化面で世界を席巻したのは、2000年代頃からでした。恐らくエラリー・クイーンが生きていた1900年代から1980年代に、韓国のイメージが今ほど華やかなものではなかったことでしょう。
エラリー・クイーンのクラシックな作風と韓国文化を織り交ぜるとすると、どのようなミステリが可能でしょうか。例えば、儒教のテイストをモチーフに、韓国らしさの醸成が可能かもしれません。欧米の価値観とアジアの価値観を代弁するキャラクターを登場させながら、証言どうしの齟齬を指摘していくミステリはどうでしょう。ぜひ韓国料理も登場させたいですね。エラリークイーン作品にキムチが出てきたら、感動すると思います。
タイトルは以下で、どうでしょう。
『韓国李朝壺に眠る謎』(原題:The Korean Joseon Jar Mystery)。
なお、有栖川有栖先生の国名シリーズは以下です。(上記アイデアと被っていなくてよかった。)
1994年 短編集 ロシア紅茶の謎〈国名シリーズ1〉
1995年 スウェーデン館の謎〈国名シリーズ2〉
1996年 短編集 ブラジル蝶の謎〈国名シリーズ3〉
1997年 短編集 英国庭園の謎〈国名シリーズ4〉
1999年 短編集 ペルシャ猫の謎〈国名シリーズ5〉
2002年 マレー鉄道の謎〈国名シリーズ6〉
2003年 短編集 スイス時計の謎〈国名シリーズ7〉
2005年 短編集 モロッコ水晶の謎〈国名シリーズ8〉
2018年 インド倶楽部の謎〈国名シリーズ9〉
2019年 短編集 カナダ金貨の謎〈国名シリーズ10〉
2024年 日本扇の謎〈国名シリーズ11〉
世界は広い。ぜひ世界を舞台にしたミステリー小説を読む/書く楽しみを通して、自室にいながら世界を旅してみたいものですね。