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写真で振り返る新生ミステリ研究会・文学フリマの旅~福岡庵字編+清張の軌跡(東京ステーションホテル尾ノ池編)

 こんにちは。会長の庵字です。

 今回は、去る2025年10月5日に開催された「文学フリマ福岡11」に出店した様子などを、またしても私の視点から綴っていきたいと思います。

10月4日

 新潟~福岡間は、IBEXエアラインズが直行便を飛ばしています。このIBEXは仙台と大阪を拠点としている航空会社なのですが、どちらでもない新潟福岡間に路線を持っているのは謎です。ありがたいことです。

 文学フリマ前日はいつも参加メンバーで決起会を開催するのですが、到着後に時間があるため、せっかくなので福岡観光でも、と選んだのが福岡タワーでした。多面体の集合で構成されたような独特な外観の塔が海浜にそびえ立つ光景は圧巻です。

 なぜか敷地前にはインドの神様を模した像が建ち並んでおり、Kanさんの『赤沼家の殺人』収録「弁才天殺人事件」でおなじみの弁才天(サラスヴァティー)もいました。

 タワーを登り絶景を楽しんでいると、そこに……急雨! バケツをひっくり返したような急雨! 曇り空だったので、もしかしたら、とは思っていたのですが……。

 これが……。

 数分後にこうなりました。

 雨雲レーダーを確認すると、十数分後にわずか数分だけ雨がやむ時間があることを知り、その間隙を縫ってバス停へ……と目論んでいたのですが、雨雲レーダー予想は見事に外れて土砂降りは継続。やむなくタワー併設のコンビニで傘を買い求めました。

 決起会には、私、凛野副会長、尾ノ池さん、に加えて、九州在住のメンバー樹さんにも参加いただきました。参加いただいたというか、お店を樹さんにセレクトしてもらったので、こちらが参加したという感じです。樹さんは文学フリマ福岡開催時にしか今のところお会いする機会がないので、貴重な決起会となりました。

10月5日

 いよいよ開催当日です。場所は昨年と同じ「博多国際展示場&カンファレンスセンター」。博多駅から徒歩圏内で、会場も狭すぎず広すぎず、使用される机も幅があり、会場アクセスのしやすさ、ブースの快適さでは文学フリマでもトップクラスの会場です。

 読書会などオンラインでしか面識のなかった方々もブースに訪れてくれて、これまた貴重な機会をいただきました。

 開催規模から換算して少なく持ち込んだ事情もあったのですが、数点の本が完売いたしました。新生ミステリ研究会でお買い上げいただいた皆さまに心より感謝申し上げます。

 毎度おなじみ無料配布短編ミステリは今回250部を用意したのですが、すべて配布しきれました。受け取っていただいた皆さまにも感謝申し上げます。

 イベントが終われば恒例の打ち上げです。博多と言えば、のもつ鍋で、こちらのお店も樹さんにおすすめいただきました。肉、野菜、スープのすべてが美味で、無限に食べていられます。締めで腹に溜まるちゃんぽん麺を入れて終了したのですが、それがなければまだ食べていたかもしれません。

10月6日

 鹿児島本線で門司方面から行くと、博多につく三つ手前に香椎という小さな駅がある。
 松本清張『点と線』

 凛野さん、尾ノ池さんは前日夜に発たれたのですが、私は例によって(帰りの足の問題もあり)もう一泊して、朝から向かったのは香椎です。ピンと来た方もいらっしゃるかもしれません。そうです、松本清張の看板作品『点と線』の舞台(死体発見現場)となった土地です。博多駅から電車で10分程度で香椎駅へ、そこから西へ数百メートルも歩くと「西鉄香椎駅」に辿り着きます。この西鉄香椎駅とJR(当時は国鉄)香椎駅との間に関するある事柄が『点と線』のトリックに関する重要な要素となっています。

JR香椎駅

JR香椎駅と西鉄香椎駅との間の道路

 西鉄香椎駅には、松本清張が『点と線』を執筆した時代から残る桜の木が「清張ゆかりの桜」として残されています。松本清張が特に気に入っていた桜だとか、そういうわけではなく、銘文を読むに、「もしかしたら清張もこの桜と触れあったかもしれないなー」くらいのゆかりですが、当時の空気を残す貴重な桜であることは間違いありません。

清張ゆかりの桜

 駅の外壁には『点と線』をモチーフとした展示もあります。当時の西鉄香椎駅と桜の様子が『点と線』の本文とともに描かれています。

『点と線』の展示

西鉄香椎駅で降りて、海岸の現場までは、歩いて十分ばかりである。
松本清張『点と線』

 西鉄香椎駅から、死体発見現場である海岸まで歩いてみることにしました。作中の描写では「駅からは寂しい家なみがしばらく両方につづくが、すぐに切れて松林となり、それもなくなってやがて、石ころの多い広い海岸となった」とありますが、さすがに風景はまるで様変わりしています。「寂しい」とはとてもいえない街並みが続き、広い国道3号線を渡り、福岡高速道路の高架をくぐるとやがて、遊歩道が整備された海岸となりました。この遊歩道の案内図にも『点と線』の舞台であることは記載されていました。

海岸の様子と遊歩道案内図。

 さすがに「作中ではここで死体が発見されました」とまでは書かれていませんでした(笑)。

 せっかくなので遊歩道を一周してから香椎駅に戻り、そのまま二日市駅を目指しました。実はことあと、樹さんに太宰府天満宮をはじめとした周辺の神社仏閣を案内してもらえることになっていたからです!

大宰府政庁跡

元号「令和」の元となった歌が詠まれた神社「坂本八幡宮」

観世音寺と戒壇院(天下三戒壇のひとつ)

太宰府天満宮内にある「飛梅」

 最後に訪れた太宰府天満宮以外は、その重要性にもかかわらずどこも閑散としており、たいへんもったいないなと感じました。

 そしてお昼にいただいたのは、こちらも樹さんおすすめの「牧のうどん」。本店で作った出汁を各支店に運搬している事情から、福岡近辺にしか店舗を出せないという、本当の地元グルメです。うどんといえば一般的には、いわゆる「こし」のある麺が良いとされていますが、この「牧のうどん」で出される麺は、そういった「こし」がありません。といっても、本来「こし」がなければいけない麺が柔くなっている、というネガティブなものではなく、柔らかいからこそ美味しい、というポジティブな柔らかさなのです。さらには、言うだけあって(偉そう)出汁、スープが最高です! 柔らかい麺がこの旨い出汁をどんどん吸うからさらに美味しくなるのです。私が案内していただいたのは太宰府から近い大野城店でしたが、博多バスターミナルや福岡空港近くにも店舗があるそうですので、来年、文学フリマで福岡に行く予定の皆さまにはぜひ食べていただきたい絶品です。

牧のうどん

 フライト時刻が近づき、いよいよ福岡とのお別れとなりました。歴史があり食べ物も美味しい、福岡は最高でした。「日本で、ここ福岡が一番好きです」。来年の文学フリマ福岡にも必ず来ます。福岡の皆さま、一年後にまたお会いしましょう!

帰りの飛行機は「ベガルタ仙台」コラボ機でした。

飛行機からも「香椎海岸」を望めました!

10月6日は満月でした。月と夕暮れと雲海と玄界灘


コラム内コラム by尾ノ池花菜
 10月の課題図書は、松本清張『点と線』でございました。
 (動画はこちら。

 さて、松本清張の聖地は色々ありますが、今回は東京ステーションホテルに宿泊したお話を、庵字さんのコラムにかこつけてご紹介します!

 東京ステーションホテルとは、東京駅に隣接する由緒正しきホテル。
 なんと、東京駅開業から一年後の1915年(大正4年)に創業している。100年以上も前! 日本の歴史とともに歩んできたホテルなのですな。
 (ホテルHP)

 歴史があるところに、文豪あり。様々な文豪も宿泊して、滞在している当お宿。
 なかでも松本清張の小説『点と線』における、肝トリック「列車の時刻表を使った、寝台特急を目撃することのできるわずかな4分間」の着想したのは、松本清張が1956年(昭和31年)頃にこのホテルに度々滞在し、客室から見渡せたプラットフォームを見ていたからだったと言われています。

 また江戸川乱歩『怪人二十面相』では、名探偵明智小五郎と怪人が虚々実々の駆け引きをする場面がありますが、その舞台はこのホテルの客室なんだそうですよ! 江戸川乱歩も滞在したのか。同じ空気が吸える喜びスーハー。

 川端康成内田百閒も滞在。文豪に愛されたお宿だったのだとしみじみします。

 みなさんも機会があればぜひ泊まってみてください!朝のビュッフェ、まじ美味いよ。

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