

コラム――。
そう、コラムとは――
【ここにコラム、つまりColumnという言葉の原義、用法を書き記す。またそれに引っ掛けたちょっとひねりのあるニヒルな概念を前提条件として置く】
しかし翻って僕はどうだろう――
【ここでキャラクターの心情を置く。奇妙な符合があるようなもったいぶった書き方をするとなお良い。現実の描写を嵌め込めばアンニュイを増幅させられる】
ぱっと目が覚めた――
【ここで現実に回帰する。何かが主人公に起こり、今まで脳内で描かれていた二束三文の馬鹿げた妄想が何か現実を変化させたような気がする。本編が開始する】
さあ、【コラムというお話】が始まりました。
ということでコラムでは初めまして、安条序那―AnjoJona―です。
コラムを書くにあたって庵字さんに何を書けばいいのか以前聞いたのですが、庵字さんから「自由でいいよ~。むしろ堅いコラムばっかりとかもとっつきにくいから自由に書いてね」と言われましたので、前回のコラムの内容を読んで今回は比較的にライトなテーマを選択することにしました。
これはまさに今小説を書いてみたい! と思っている人に向けての必殺攻略的な裏技紹介――つまり原義のコラムとは違い、極めて日本人Nizedされた身に馴染みのあるコラムを書こう、という小話です。さあさあ良ければお立ち会いください。
まず最初に、小説を書くというのは特殊な行為です、と前提させていただきます。生業ならまだしも、生業でもないのに小説を書いているのは、言ってみれば二足の草鞋を履いているようなもの、文字の世界は深遠で複雑怪奇です。また流行廃りの世界でもあります。だのにぽつんと足を立てた初心者は、まず方向感覚がありません。ジオゲッサーin文学界です。
強烈な個性、或いは病的鋭敏を持つ表現力、そうでなければ人とは違った経歴から来るリアリティ――そういうわかりやすい強みがあればいいんですが、まあ、そんなに人生うまく行くものではありません。しかしそれがないとうまく発見されることも少ない、そういう世界でもあります。そんな中に裸足で、或いは急造した草鞋でみなが入っていくわけですから、指標がありません。
これはあらゆる創作物において言えることですが、最初の一歩というのは自分で踏み出す必要があります。テンプレートがない世界、またはあってもそれを使えるかどうかは最初の一歩を踏み出していない者にはわからない世界なのです。補足しておけば、踏み出した者でさえ、見誤る世界でもあります。
ですので今回はコラムとは、まさにその外れの一個を提示する、というようなフォーマットになっています。失敗する一歩目を踏み出させるためのフォーマット、不思議ですね。まるでレミングの自殺みたいです。
ただしかし、知ると知らないとでは、踏み出した失敗の価値というのは大きく変わります。失敗するということに対して意味を引き出したい――死ぬにしたって理由と答えが欲しい、そういう思いは誰しも人が持つものでしょう。
ですから今回の冒頭でお見せしたのは安条流【とりあえず使って死ねるフォーマット】、長いですから【ず死ーマッ】と略しますが、そういうものになります。
時折忘れてしまいそうになりますが、小説を書くという行為は千差万別の下地を一定の論理に当てはめていく、或いは逆走して位相空間を突き抜けて逆側からはめる、というような方法論の世界です。安条は売れた本を後から追いかけるまるで出歯亀のような不定の輩なのですが、よくそう思います。
その為小説というのはかなりの割合で何かしらの論理構成で読者を引っ張っていくことになるわけですが、その為には謎の提示をする手際というのが必要です。先述の【ず死ーマッ】は、その手際の一例紹介というわけです。勿論この【ず死ーマッ】は、僕が今まで読んできた中で一番使いやすそうな冒頭をロジックに嵌めているわけですから、僕個人のオリジナルというわけでもありません。
テーマと遠大な距離にある違和感との連結、読者の驚きとは言ってしまえば水が谷底に落ちるときに轟音を響かせるのと全く同じ、精神の運動エネルギーと変わらないのです。ですので今回のコラムを読んで小説を書いてみたい! と思っていただけた人は、ぜひ最初の一歩を僕と死にましょう。楽しいですよ、残機が減るのは。
閑話休題、実際問題、【ず死ーマッ】は使いやすいフォーマットです。乱用するとバレるので余り連打できるものではありませんが、いわゆるプロローグというのが綺麗に書ければ、人というのはそのまま読んでくれるものでしょう。
情報の高速化という時代では、短い間にどれだけ知的好奇心、もしくが下衆っぽい窃視欲求を解消させてあげるか――言うなれば読者が優位な気分に立っている気にさせる――が読み続けてくれるかの喫緊の課題となるわけです。そういう意味では【ず死ーマッ】はあまり優れたフォーマットとは言えません。どちらかというと中速から低速寄りの重いフォーマットということになりますが、こと使いやすさにだけ絞れば、相当な【とりあえず今夜勝てる】系のフォーマットであることは確かです。
必要なのは物語のテーマと、それに引っ掛けた参考書が二、三冊。ほら、簡単でしょう? また物語の最初に謎を提示できる点でも、【ず死ーマッ】は扱いやすさに優れていると言えます。
『書き出しという永遠の謎を解決する一つの魔法、それが【ず死ーマッ】』
なんて良い点だけをぽんぽこ放り込ませていただきましたが、先程も予防線としてみっともなく提示した通り、【外れの一個を提示する、というようなフォーマット】【失敗する一歩目を踏み出させるためのフォーマット】と言っているように、これが必ずしも全人類に適応できるわけではないのです。とはいえ武器は武器。ぜひこれを期に小説を書いてみたい画面の前のあなた!
やってみましょう。【ず死ーマッ】で、墓場の僕と握手。
それでは次の記事か、小説でお会いしましょう。
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