★公開★最新BOOK CATALOG_新生ミステリ研究会
『妄想禅殺人事件』
ご無沙汰しております。Kanです。
新生ミステリ研究会の八月下旬のコラムということで、ちゃんとしたミステリ絡みの記事を書きたいとも思ったのですが、夏バテと低気圧の影響で、体調が優れないので、今回は少しばかりゆったりした、他ジャンルとも繋がりのある話題でゆきたいと思いました。
今回は、二つのテーマの小話を、一つのコラムとしてまとめたいと思っています。すなわち①古本屋めぐりのすゝめ②ミステリ鑑賞に合う音楽(ジャズ)の二つです。
①古本屋めぐりのすゝめ
今の時代、Amazonを始めとする、さまざまなネットの通販サービスを活用すれば、自宅でも簡単に古本・新本を購入できるものです。かくいう僕もAmazonで沢山の書籍を購入しています。
また、古本屋というので、若干紛らわしいですが『日本の古本屋』などのネットのサービスを利用することでも、希少本が手に入ることがあります。


これは探偵小説雑誌『宝石』の創刊号の写真ですが、横溝正史の『本陣殺人事件』が連載されていて、第一巻の第二・第三・第五号も全てネット通販で購入しました。しかし金田一耕助初登場回の第四号だけは今でも見つけられずにいます。
探偵小説雑誌『宝石』は、今では復刻版が出版されているし、国立国会図書館にゆけば、内容は確認できると思いますので、購入することはコレクションし、繰り返し鑑賞する楽しみのためであります。こうした古物との出会いには、唯一無二の喜びを感じます。
ネット通販ではなく、わざわざ古本屋に足を運んで、古書を探す醍醐味は、一体どういうところにあるのでしょうか。
まず、メリットを考えると、古本屋をめぐらないと購入できない希少本は、現時点でも無数に存在しています。
それに古本屋ですと、ネット通販より、安く購入できる場合があるのは事実です。新本よりも古本を中心に購入することで、より多くの作品を収集することができるし、金銭的にもお得なのは、昔から変わらないのです。
しかしながら、僕が古本屋めぐりの最大の魅力だと感じているのは、そんな損得の勘定とはまるで次元を異にした、自己と古書との予測不能な接近遭遇そのもの、すなわち偶然の出会いによる神秘体験そのものなのです。古書購入は、相即相入という華厳教学をも考慮に入れなければ捉えることの出来ない、自と他のユニークなコミュニケーション手段でもあります。その刹那刹那の出会い、一つ一つが、アトラクション的であり、唯一無二の体験ともなり得るのです。また、古本屋めぐりそのものがスリリングで、ショッキングで、エキサイティングで、エキセントリックな芸術体験であるとも言えるのであります。
古本で購入すると、作者には一銭も入っていない都合上、ネット上であまり作者名・作品名を一々挙げたくないのですが、それでは記事がつまらないので、正直に申し上げますと、ここ最近では、吉祥寺と中野の古本屋で、日頃あまり読まないホラー漫画を求めて、たとえば伊藤潤二『伊藤潤二傑作選7 首のない彫刻』、日野日出志『地獄変』のようなものを一度にまとめて何冊か購入しました。その際にホラー漫画ではありませんが、横溝正史原作、つのだじろう作画の『犬神家の一族』『八つ墓村』のミステリ漫画を購入して、これは意外な収穫でした。内容については、こんな話じゃないだろ、とツッコミながら読みました。西岸良平の『夕焼けの詩 三丁目の夕日』を何冊か、また同作者の『ヒッパルコスの海』といった素晴らしい作品も、古本屋で購入しました。余談ながら西岸良平の『鎌倉ものがたり』には、ユニークな江ノ電ミステリ漫画が収録されています。古本屋購入ということでは、シュルツの『PEANUTS』や水木しげるの漫画数冊も同様です。神保町では、山田風太郎作品(『妖異金瓶梅』『警視庁草紙』など)を中心に購入していました。
普段なら購入しておくべき書籍をある程度、リストアップしておいて、偶然、見つけたら金額を確認し、安ければ即購入するといった作業的な古本屋めぐりをしている僕なのですが(たとえば司馬遷の『史記列伝』を揃えようと前々から思っている時に、古本屋で、5冊セット・千五百円というのを見つけて即購入したり)、それよりも、ただ、なんとなく「ホラー漫画みたいなものを」と思っている程度の状態で、古本屋の本棚の実際のラインナップを見て、ジャケ買いするのが一番楽しいことだと思います。
それと傑作・名著を割安で購入することに全力を尽くすことより、変な絶版本・B級書籍を感覚のみで買ってみることをおすすめします。そんな時、人生に損という概念はいりません。
②ミステリ鑑賞に合う音楽(ジャズ)
音楽ファンなので(主にジャズとクラシック)、ミステリに合う音楽は何かを考察するのも楽しいかと思って、実は今まで一秒も考えたことない話題ではありますが、コラム作成にあたって考えてゆきたいと思いました。
ミステリ系の音楽といえば、一般的に大野雄二作曲の、映画『犬神家の一族』のテーマ曲である『愛のバラード』、法廷バトルゲーム『逆転裁判』のサントラ、ノベルゲーム『かまいたちの夜』のサントラあたりが定番中の定番で、ミステリ音楽御三家だと思います。僕もミステリ小説を書く際には、これらの音楽を一日中聴いて、イメージ作りをしているのですが、さすがにこのサブカルチャー・エンターテイメント世界には、もっとミステリに似合う楽曲が色々あるに違いありません。
大野雄二さんの音楽といえば、ジャズであり、フュージョンの感じが強いので、ミステリはフュージョン(そしてジャズ)と相性が良いに違いないと思いました。
ジャズファンには怒られるかもしれませんが、僕がミステリ小説に似合うと感じる、ジャズ名盤からの名曲を三曲ほど、この場で紹介してゆきたいと思います。
❶MJQ『フォンテッサ』より『フォンテッサ』
MJQの中でも、特にミステリアスな美しさを秘めた、高貴な雰囲気が漂う名演。ヨーロピアンなゴシック・ミステリー、たとえばフランスの古典ミステリなんかに似合いそうな印象がある。ガストン・ルルーの『黄色い部屋の謎』とか。
❷ハービー・ハンコック『ヘッド・ハンターズ』より『カメレオン』
エレクトリックで、ファンキーな泥臭さが、勝手なイメージながら、アメリカの刑事ものなんかにも似合いそうなので(アメリカの『フレンチコネクション』や『ダーティハリー』みたいなアクションスリラー映画)今回、選んだ。ジャズの批評の観点でも、ずば抜けた名演(僕にジャズの批評の批評は難しいですが)。
❸セロニアス・モンク『ミステリオーソ』より『ミステリオーソ』
セロニアス・モンクの大ファンである僕は、ミステリと聴くと、どうしても『ミステリオーソ』の方を先に思い出してしまう(というほどのことでもないけれど)。ミステリ小説に似合うかと尋ねられると首を傾げてしまうが、シュールな神秘感はピカイチ。1958年のアルバム『ミステリオーソ』に収録されているが、これ以外にもミステリオーソには名演が多い。
エリック・ドルフィーの『アウトゼア』なども超俗的な神秘感満載で、是非とも紹介したかったが、整合性を求めるフーダニットには不向きな為、ミステリ全体を考えると似合っていないかもしれない。同様の理由で、フリージャズは選ばなかった。
探してみると、なかなかピッタリ来るものがなくて、案外、ミステリ小説とジャズは相性が良くないのかもしれないと思いましたが、エレクトリックな楽器のもので、フュージョン色が強いものに絞れば、もっと良い選択が出来るのでは、と思いました。『ミステリー』要素はあっても、なかなか『フーダニット』要素のあるジャズは少ないものでした。しかし刑事たちの犯罪捜査を匂わせる雰囲気のアクション・スリラー・ハードボイルドテイストなジャズはだいぶある印象です。
何のためにこんなことを考えているのかわかりませんが、ミステリ絡みの記事ということで、音楽を紹介しました。とはいえ、ジャズを聴いていて、ミステリを連想したことはあまり無かったり……。
結局、大野雄二作曲、『犬神家の一族』の『愛のバラード』と火曜サスペンスの『聖母たちのララバイ』、それに映画『Wの悲劇』のテーマ曲あたりがあれば、十分なのかもしれない……と、なんともまとまりのないコラムでした。